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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その30

 今年、阪神大震災から15年を迎えた。私は直接の被災者ではないが、余震が断続的に続くなか、大阪湾を臨む向こう側の空が次第に黒くそして暗くなっていった光景は今も忘れることはない。また、映像により被災地で起こっている詳細を知って、何か怒りに似た感情が湧き騰がったことも、身体の芯がよく記憶している。今から思えば、それは目の前にある現実を言葉にできないもどかしさだったに違いない。
 ところで、こんな噂を聞いたことがある。震災当日、ある大物政治家が昼食で幕の内弁当を食べながらテレビを視ていた。そこには被災地の様子が映し出されていて、それを見ながら彼は一言、「いやいや、よく燃えてるじゃないか」と笑いながら話したそうである。これはあくまでも噂である。しかし問題はそれが噂かどうかということではない。ここでの問題とは、まさにこのような不謹慎で品位のない噂が噂として巷に広がるところにある。政治や政治家に対する不信と失望がこの類の噂を生み出したのだとすれば、それは長く国民を愚弄し続けてきたひとつの結論以外何ものでもない。
 震災は防災のあり方などの新たな枠組みを作る契機になった。私もそれについて積極的になった。しかし、積極的になったことがもうひとつある。それは、無関心に近かった政治についてまた政治家の存在について真剣に考えるようになったことである。もちろん、このことは今後も変わらない。


甲山羊二
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