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コラムⅡ
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風Ⅱその22

 昨年、初めて兵庫県加西市を訪ねた。そして、鶉野飛行場跡並びに今も残る施設を見学した。5年前から始めた「戦後を辿る旅」の一環としてだ。
 鶉野飛行場はかつて姫路海軍航空隊基地のあった場所として知られる。白鷺隊と名付けられた特攻隊は、ここで兵を募り、鹿児島の串良基地から飛び立った。
 特攻隊・・・。海に沈んだ若者・・・。今は英霊として静かに眠る。
 ボランティアスタッフの案内に従い、民家の下の防空壕も見学した。そこには未だ人の息遣いが残る・・・。生きるまたは生きようとする本能、さらには何かを必死に守ろうとする執着と集中は、人に別の意味での新たな生命を吹き込んでいく・・・。
 今年6月、特攻隊員を乗せた紫電改の実物大模型が、加西市で披露された。資料館を運営するその方は、ご兄弟で歴史の保存に努める。尊い事業だ。
 「戦後を辿る旅」は決して物見遊山などではない。更には平和を祈るだけのお花畑ツアーなどでもない。それはまさに人間の究極の思いを肌で感じるもの。これが「戦後を辿る旅」の趣旨だ。
 スマホでゲームのイカれたサラリーマンやボンクラが学生には、人間の生きる本能など分かるはずもない。活字に目を通さない無能派にももちろん理解されない。それでも歴史は決して嘘をつかない。人間を裏切ることもない。
 旅はまだまだ続くのだ。

甲山羊二
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