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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次

 ああ言えばこう言え!その4
 人間の遠い祖先は実は猿であったという。
ということは、人間にとって猿は尊い存在であるわけで、むやみに檻に閉じ込めて、やたらジロジロ眺めたり、或いは、安物のスナック菓子をヒョイと放り投げて与えたりすることは、祖先に対する冒涜行為で許しがたい行為ということになる。
お盆やお彼岸に墓参りをして、先祖の霊を慰めるのもよいが、同時に先祖の遠い祖先である尊いお猿様への崇高な気持ちも決して忘れてはならない。
また今後、行楽地などで猿を見かけたり、また猿に良く似た人と出会ったりした場合は、謹んで礼を尽くすことが大切である。
「進化途上の出来損ない者めが!」などとからかうのはもってのほか、これまでの不義理を詫びる意味でも、お近づきのしるしとして、居酒屋へご招待するのもひとつの方法であろう。
人間と猿との関係が良好になれば、お互いどちらともなく「ちょっと一杯!」と誘い合うことになるかもしれない。
愚痴をこぼす人間を猿が「とにかく今日は呑みなよ」と励ましたり、酔い潰れた人間の背中を猿が毛だらけの手で擦りながら介抱したり、最終電車に乗り遅れてしまった猿が、まるで「ムンクの叫び」のような表情でタクシー乗り場に手足をフルに駆使して走る姿など、ありとあらゆる光景が見られるに違いない。
とにかく私たちは、人間の遠い祖先である猿をもっと敬愛しなければならないのである。
「猿でもわかる・・・・」など、失礼極まり無い。
お猿様は全てをご存知なのである。

甲山羊二
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