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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その10

 新聞の折り込み広告で、最近やたらに目立っているのが、「体にいいこと」をしきりに宣伝する内容のものである。
怪しげな食品に衣服にベルトにマシーンにと、宣伝の中身は多種多様である。
確かに、あえて体に悪いことをして自らを破滅に追い込もうなどと考える人間はいない。
いやたとえいたとしても、それは既に人間を捨てようとしているわけだから、人間の枠組みでその生き物たちを捉えてはいけない。
私などは全くの自然体、体に良いとされる食品も衣服もベルトもマシーンもすべて不要である。
つまりは金を掛けてまで、体にいいことをしようなどとは毛頭思わないのである。
これだけ金を掛けたのだから、やれ痩せて当然だとか、何キロ痩せたとか、その妄念こそが精神衛生上良くないことを知っているからである。
 日本人は修行をこの上なく好む。だから体にいいことをするのも、専ら修行へと変貌していく。
例えばウォーキングをしている老夫婦を見るがよい。
恐ろしいほどのあの形相は、まるで比叡山の千日回峰行者ではないか。いや回峰行者でさえあのような恐ろしい形相ではない。
まさに町中を闊歩するウォーキング行者である。  心にいいことは体にもいいことのはずである。
心を豊かにすること体を豊かにすることに繋がる。恐ろしい形相は周囲にも良くない。
風呂でも熱湯を好む人などいないだろう。
丁度良い「いいかげん」が心にも体にもよろしいのである。

甲山羊二
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