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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その13

 陰惨な事件が後を絶たない。
事件は世相を反映したものであるから、現代の世相そのものが陰惨であると言わざるを得ない。
ところで一体全体陰惨の定義とはどのようなものであるのか。
陰惨であるという事実が人の心に深く刻み込まれなければ、それは決して陰惨とは言えない。
たとえそれが陰惨な事件であったとしても、ただそれだけで陰惨であるとは断言できない。
その事件が人の心に刻み込まれたか否か、その事件を通して人が社会全体をどう捉え直そうとしたのか、この要件を満たさなければどんな事件も陰惨であるとは言えない。

 事件が陰惨であることの要件を満たしたとき、私たちは自分達が良かれと思って作り上げてきた環境を見渡すことになる。
そしてその環境は私たちが暗黙のうちに追認し続けてきた環境ほかならないことに気付く。
例えば、私たちはこれまで教育とおせっかいを取り違えてきた。
そのことを胸に手を当てて考えたとき、一度作られ一度追認された環境は、そう易々と元には戻れないことに気付いて愕然とする。
 陰惨な事件は、私たちが自分自身とそれを取り巻くすべての環境を省みることのできる大いなるチャンスでもある。
ただ傍観することは許されていない。
あらゆる手段でもって思い当たる節を模索しなければならないのである。

甲山羊二
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