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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その18

 社会保険庁の不正が次々と明らかになっている。
そもそも年金制度の信用性にどの程度まで裏づけがあったのかが不明なわけで、その意味で、制度そのものがいかに脆弱な根拠の上に立ち続けてきたのか、よく理解できる。
 日本の年金制度の実態とからくりについては、難解な理論も法則も不要である。むしろ簡明な理屈と方法によって十分解明が可能である。
そしてそれによって、年金制度が制度として崩壊しつつあるのではなく、むしろ既に崩壊してしまっている事実を知ることができる。
少子高齢化、運用率低下、年金法改悪、そして高未加入率、制度のどこを信用せよと高らかに謳うのか、ほどほど理解に苦しむ。
 かつて、私は旧厚生省の役人からこんな話を聞いたことがある。
「甲山さん、日本という国家は国民に決して嘘はつかない。年金給付額がたとえ1円になっても、それ自体明らかな給付であって、嘘にはならない。大体、『私たちは将来の給付額を幾ら保証します』など、約束した覚えはない。給付は約束できてもその額まで約束はしない。制度とはこういうものです」
 この官僚の言い分は正しい。しかし、言い分の正しさと真の正義とは明らかに異なる。
これは国民の類推力と読解力を馬鹿にした詭弁にすぎない。いや、それ以下である。
言い分の正誤が問題なのではなく、正義不正義を問題にすることこそ、正しい国家運営であり、正しい制度のあり方ではないか。
正義を忘れた官僚に自浄能力など期待できるはずがない。
 こうなれば、私たち国民も以下の要領でできるだけの武装を試みるべきである。
要領① 詭弁に負けない更なる類推力と読解力を身に付けよう。
   ② 今後も明らかにされるであろう不正義に基づく不正に負けない忍耐力を身に付けよう。
 これらの要領によって、しばらくは日本国民として生存できるかもしれない。

甲山羊二
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