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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その20

交通事故におけるひき逃げ事件が増加している。
10月には大阪市内で被害者を3kmも引きずって死亡させた事件は記憶に新しく、その後も同様の事件が後を絶たない。
吉田圭吾容疑者は、事件当時は執行猶予中で、しかも無免許での飲酒運転だったという。当然殺人罪を適用すべき明確な案件といえる。
 送検される時の彼の表情は、まさに人間の屑種を象徴したものであった。
彼は口先だけの反省で、心からの反省などすることなく、一生を屑種として生きていくのだろう。無意味な価値観を貫くために、暴力で他人の生活を破壊し逃亡するという卑劣な屑種の表情を決して忘れてはならない。
 民主主義は多種多様の人間が存在する社会である。
文化的な人間もいれば、それを否定する人間もいるし、そこにはあらゆる価値観が渦巻いている。
何を受け入れるのか、何を拒むのかは自由である。
そして自由の背景には必ず自己責任が付きまとう。自己責任のない自由など存在するはずがない。
 同様のひき逃げ事件の容疑者の実父が「息子には生きる価値がない」とコメントしていた。私はその新聞記事を読んで愕然とした。何と稚拙なコメントだろう。国語力の無さも甚だしい。
あなたの息子は、運転する自動車で他人を7kmも引きずって死亡させたのだ。
正常の運転ではなく、飲酒運転で尊い命を奪ったのだ。「生きる価値がない」ではないだろう。「死んだ方がよい」が妥当ではないのか。
これが文脈であり、これが脈絡というものである。何でもいいから、口から出任せにコメントすれば良いというものではない。そんな自由はない。
ひき逃げは決して許してはならない。まして「逃げ得」という無意味な価値観など全く不要である。
そのような価値観はそのまま摘み取る他ない。

甲山羊二
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