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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その22
近鉄奈良駅を下車、地下にあるホームから改札を経て地上に上がる。そこから商店街を南方向にしばらく進むと、左手にお洒落な長屋が見える。
付近には猿沢の池があって、そこで亀が戯れる姿を想像できる。実はこの長屋、普通の長屋ではない。
それぞれに趣向を凝らしたお店が見られる一角なのである。そのうちの一軒にピラリータウンという手描きイラストのお店がある。
私はこのピラリータウンのファンの1人である。
そこにいるのは一見二十歳くらいのお嬢さん、実は彼女は通信制高校に通う生粋の高校1年生である。
ピラリータウンとは彼女のアトリエであり、そこはまさにひとつの世界である。その世界とは、彼女だけが知る空想の世界であり、彼女だけが描ける世界である。
私たちは、彼女の描いた作品を通してのみ、その世界に間接的に関わることを許される。
彼女には個性がある。そして自分の個性を尊重し、それを伸張しようとしている。
彼女との会話を通して私が感じたこと。それは1人の大人として嬉しくもあり、また一方では恥ずかしくもあるということ。
責任転嫁の答弁だけを繰り返す大人を彼女はどう見ているのだろう。いや、彼女のみならず、子どもたちはどう見て何を感じているのだろう。きっと心の中で愛想を尽かしているのかもしれない。
哀れな大人がはびこる中で、きらりと光る若者が大勢いることに気付かされる。
「昨今の若者は・・・」よりも「昨今の大人は・・・」或いは「昨今の親父たちは・・・」の枕詞に、私たちはもう少し敏感になって良いのではないかと思う。
甲山羊二
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