牧場小屋
Top
コラムⅡ
心に吹く隙間風
目次
心に吹く隙間風Ⅱその13
一昨年から始まった戦後を辿る旅。今年は江田島にある旧海軍兵学校、広島の原爆ドーム並びに平和祈念資料館を訪れた。
この旅の目的は何か。いや、そもそもこれは旅ではなく、僕にとっては視察に極めて近い。では僕はそれぞれの地で何を思い、何を感じ、何を考え、そして何を学んだのか。靖国、知覧、万世、鹿屋、さらに江田島、そして原爆投下の地で・・・。
僕の内面を一気に吐露することは難しい。ただ近いうちに、僕はこれらをしっかり整理してきちんと文章でもってまとめたいと考えている。むしろ今はその精査についての時間を欲したい。
僕は戦争を知らない。それは知識としてではなく経験として僕の身体のどこにも刻まれていない。では平和はどうだろう。僕が今享受しているのは確かに平和だ。そしてその平和は紛れもなく先人の地と汗と涙による結晶だ。僕は平和を生きているのではない。平和に生かされている。いや、平和を与えられた世代とも言える。何より、先人から受け継いだ平和を未来へと継承する義務を負う。
平和は安楽のためにあるのではない。平和は守るためにある。里山のように、そこにあって自然に必然とあるのではない。いや、里山だって人間がそれを自らの知恵で守っているではないか。
平和を守るために知恵を絞ろう。ただし、平和が何者かによって破壊される危機に瀕したとしたら、僕は先人のように死を決賭して立ち上がろう。個人のちっぽけな平和の為でなく、この国の為に全身全霊で戦おう。命を懸けて国の平和を守ることが、その大いなる気概が、軍国主義の復古だと僕は全く考えていない。
戦後を辿る旅。僕にとってそれはこの国を愛する為の旅だったように思う。日本を愛する旅。そして日本人とは何かを考える旅。ただ、はっきり言って、国を愛する気持ちと国民を愛する気持ちが僕の中で整合しない。だから精査が必要なのだと改めて僕は思うのだ。
甲山羊二
←12章を読む14章を読む→