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コラムⅡ
心に吹く隙間風
目次

心に吹く隙間風Ⅱその18

 J.D.マトリ氏。
 彼こそ、まさに知る人ぞ知る市井における日本人論研究者のひとりだ。加えて、日本の教育の現状についても鋭い視点を持つ。人間は教育によって成る。マトリ氏の主張は常に一貫している。
 今般、彼の著作を日本語訳にする機会に恵まれた。もちろん僕にとっては初めての翻訳となる。
『日本的馬鹿者行動学』
 タイトルは奇抜だが、中身は実に的を得ている。今や珍しくも何ともない、巷に溢れ返る馬鹿者。そもそも馬鹿者とは一体何者か。本書はその定義から始めて、馬鹿者を類型化して論じる。また、マトリ氏は日本の教育の醜態ぶりにも言及する。ここも経験者ならではの掘り下げようだ。何ともお見事としか言いようがない。
 およそ一年を掛けての翻訳作業。安請け合いを悔いたこともあったが、飽きることは決してなかった。それに投げ出そうとも思わなかった。その意味で、彼の実像を知る僕にとっても、その世界との新たな遭遇に十分堪能していたのだろう。英語から日本語へ。実際は日本語に堪能なマトリ氏も、記述となれば母語へと立ち返る。マトリ氏本人の日本語による助言は、僕には救いの御手でもあった。
 とにもかくにも、是非とも手に取って欲しい一冊に仕上がっている。現在の日本。未来の日本。それらがぎっしり詰まっている。既に僕の個人レーベルの「まきば出版」から3月に出版され、読者からは意外なまでに好評を得ている。マトリ氏に直接会わせて欲しいとの声まで出る始末だ。
『日本的馬鹿者行動学』J.D.マトリ著 甲山羊二訳
 オフィシャルサイトにあるオンラインブックショップ「まきば書店」を是非覗いて欲しい。

甲山羊二
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