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コラムⅡ
心に吹く隙間風
目次
心に吹く隙間風Ⅱその24
僕のライフワークである「戦後を辿る旅」が、間もなく単行本として刊行される。旅は2015年から始まった。旅を紀行としてではなく、単に小説としてではなく、紀行でもあり、小説でもある文体に仕上げてみた。各場所での英霊は僕をそのように導いてくれた。
靖國神社では、僕は英霊に頭を垂れる。それを見聞きした不勉強な人間は、僕を右翼作家だとつまらないレッテルを貼っては喜んでいる。
知覧や万世で、僕は涙した。そこにいた、かつていた、多くの若者の無念さに共感したからだ。広島では、長崎では、僕は怒りに燃えた。怒らない方がどうかしているとさえ思った。二度の及ぶ人体実験、主語の抜け落ちた碑文、それを日本人は甘受してきた。いや、甘受させられてきた、平和ボケはここから始まる。
市ヶ谷のバルコニーでは、三島由紀夫烈士と森田必勝烈士に出会った。彼らはもはや語らない。語らなくても、彼らが残した言葉がある。
加西では思いがけない出会いがあった。紫電改を語り継ぐ情熱。それは人を突き動かす。夢から現実へ。加西にはパワーがみなぎっていた。
舞鶴での消化不良についても僕は正直に書いた。嘘はつけない。嘘はつくべきではない。
大阪。大阪城は語られても、その周囲の戦跡は意外と知られていない。ここにも米軍の鬼畜さが蔓延している。「9・11」で溜飲を下げた日本人は実はまっとうな日本人なのだ。
そして昨年のこと、僕はようやく沖縄に辿り着いた。それはまるで取材のような旅だった。でも、それぞれが皆、忌憚なく語ってくれた。
旅はまだまだ続く。生きている限り、甲山羊二は戦後と共に向き合い、歩もうと思う。
甲山羊二
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