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コラム
心に吹く隙間風
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 心に吹く隙間風その3

 茶番な世の中である。
殆ど毎日が、茶番な三文芝居に振り回されているといってもよい。
偽装や隠蔽や詐欺、ここまでくれば言い訳無用、世の中には善人などいない、善人面した悪人どもが支配していると錯覚するほどである。
もちろん、悪人は最初から悪人面を下げて暴れまくるほど愚かではない。
善人というお面をしっかりこしらえて、準備万端、エレガントに私たちの前にお目見えするのである。
その方法はまさに巧妙、体系的な学問として十分成り立つに違いない。
 ところで、犬死という言葉がある。
最近では、奇特な警察官が、狂ったのか狂った振りをしていたのか、そんな女にまんまと嵌められて殉職するという出来事があった。
テレビの画面では、その殉職した警察官について、善人面したエレガントな住民達が、その死を悼むような台詞をものの見事に話す場面が繰り返し流されていたが、心の中は逆だろう。
きっと誰もが、自分は同じ場面に遭遇しなくてよかったと、ホッと胸をなでおろしているに違いない。
助ければ命を失い、助けなければ非難の集中砲火、ほとぼりが冷めるまで信用を失う。
死人に口なし。
本当の敬愛の念は死後ではなく生前に発揮すべきである。
来年の今頃は、映画でもならない限り、そんな出来事は記憶から消えてしまっているだろう。
家族を悲しませて殉職もへったくれもない。
警察官は生きていてこそ警察官なのである。
 タダモノに群がり、挙句に虎の子を毟り取られる頭の悪いおばちゃんたちがいる限り、善人面のエレガントさにますます磨きがかかる。
いや、磨きがかかるシステムを作り出しているのは私たちの側である。茶番は永遠に茶番でなければ進化は望めない。
甲山羊二
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