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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その38
理解に苦しむことが多い昨今である。東京都足立区では、全国長寿2番目の認定を受けていた111歳の男性が、約30年前に死亡していたとのことである。本人は即身成仏を願っていたとあるが、見当違いも甚だしい。はっきり言って、赤の他人が即身成仏することなど、私にとってどうでもいい話である。問題は多額の年金を家族が受給していたという事実である。即身成仏なのか、死体遺棄なのか、そこははっきりさせてもらいたい。年金の主旨である相互扶助という観点からも、これはうやむやにしてはならない。
理解に苦しむのはそれだけではない。行政の対応にも大きな問題がある。これは怠慢ではなく、「ずぼら」そのものである。怠慢は一時的な病であるが、「ずぼら」は慢性化してしまった厄介な病である。もう一度言うが、怠慢ではなく「ずぼら」である。ここははっきりしている。
この足立区の例の後、即身成仏とまではいかなくても、全国で行方不明の高齢者が大勢いることがわかった。原因は色々考えられる。捨てたのか、捨てられたのか、それは家族だけが知っている。ここで目立つのが、各自治体が大慌てしている様である。「ずぼら」は足立区だけではない。この病は全国にある。これではにわかのワクチンも効き目がない。
「ずぼら」の例をもう1つ挙げておこう。大阪市西区のマンションで母親が3歳と1歳の子どもを遺棄した事件である。この母親の「ずぼら」は決して見逃す訳にはいかない。はっきり言ってこれは癖である。しかし、対応した行政も大いに「ずぼら」である。しかもこの「ずぼら」によって大切な命が失われている。つべこべ言い訳も見苦しい。「ずぼら」は自らの「ずぼら」を認めない。だからどのワクチンも効かないのである。
甲山羊二
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