牧場小屋
Top
コラム
心に吹く隙間風
目次
心に吹く隙間風その44
新しいブームの到来である。行き先不明なエコブームに並行して、そこに根拠なしの節電ブームが加わることになった。とにかく今年の夏はブームに事欠かなくて済む。
あれだけ頼りにしていた原子力発電所はもはや目の敵であり、そこに依存して生み出されていた雇用についても、誰も何も言葉を発することはしない。日本人お得意の手の平返しというか、右に倣えというか、節電などはステータスの一部となりつつあるから、唖然としてしまう。
節電は悪いことではない。そうすることで家計の節約にもつながる。ここで指摘したいのは、夏さえ乗り切ればという安直な節電にどれだけの意味があるのかということである。夏は窓全開という方法がある。さらに薄着での生活も十分可能である。それでは冬はどうだろう。石油に頼るとなると資源についての議論が復活する。エコとは真逆との見方もある。何より、電力会社というモラルリスクの低い一企業からの強制にひたすら従おうとする奇妙な風潮が気に入らない。広告媒体を使うこともなく、責任者の顔や名前すらわからないところで、「節電しろ」などと命令口調で言われて、それがブームになるのだからこれは相当に御目出度い現象であるとしか言いようがない。
大臣に「知恵を出せ」と叱咤激励されたことで震え上がっているようでは復興など程遠い。さらには被災地に向かって犬の遠吠えのように「頑張れ」を繰り返すのもいかがなものか。ここはやはり知恵を絞って、目先のことではなく、日本の風土と人間の破壊構造についてしっかりと議論していくべきだろう。結局、ブームなどいつか消えて忘れられてしまうのである。
甲山羊二
←43章を読む 45章を読む→