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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その47

 昨年の東日本大震災以降、これまでにない特異な現象が蔓延しているのだという。
・家族との団欒の時間が急激に伸びた
・伴侶を求める男女が大幅に増加した など
要するに、身近な人間関係の構築を求める姿勢がここでの特異な現象ということになる。これは、結局のところ、家族や地域といった小さな単位での人間関係に拠り所を求めるという顕著な例に過ぎない。
「人と人との絆」
「皆で頑張ろう」
「皆で支え合う」
 いずれも素晴らしいキャッチフレーズであり、それらを決して否定などしない。しかしながら、一方では、いずれも日本にあるムラという単位を基準に置いた極めて形式的な言葉の羅列であるとも受け取ることができる。
 本音はこうだろう。
「自分たち家族さえ」
「自分の居住区さえ」
さらには「自分の選挙区さえ」
それぞれよければ何も問題はない。
 つまりは、実は国家単位のことなど誰も真剣に考えてはいないのかもしれない、というのが私個人の受け止め方なのである。
 それは証拠とまではいわないけれども、震災や津波で生じた瓦礫の処理が遅延しているのだという。全国の自治体の受け入れが消極的というのがその理由である。
 放射能の汚染を危惧する声がもっぱらだが、ではその汚染が現時点で特定の地域のみに留まっているのかは定かではない。知らないところで拡大している可能性だって大いにある。
 言葉なら誰でも言える。キャッチフレーズならいくらでも美化できる。大切なのは視点だろう。グローバルな視点に立って問うことを止めない。そうすることで、真の絆は生まれ、支え合うことができるのではないだろうか。

甲山羊二
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