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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その7
「不幸中の幸い」という言葉がある。
これを逆さまに「幸い中の不幸」と言い換えるにあまりにも適当な事件が多発している。
この場合の幸いとは、人間が日常として属する空間から離れて、時間的制約の中で非日常としての空間に身を置くことをいう。
そのような非日常を経験することで、私たちは日常で磨耗している身体的精神的機能を回復させ、日常へ回帰する原動力を獲得することができるのである。
だから、いい年をした大人が、東京ディズニーランドでミッキーマウスの尻を追い掛け回し、子どもたちに呆れられることは、実のところ大変意味のあるとても意義深いことなのである。
この意味のある意義深い渦中に起こる予期せぬ事件は、日常と非日常の大切な壁をいきなりぶち壊し、場合によっては、人間が最も忌み嫌う非日常である死をもたらす結果となる。
今年の大型連休中に起こったエキスポランド「風神雷神 ジェットコースター」事故は、寛ぐ私たちを心から震撼させ、一転して悲しい気持ちにさせた真に痛ましい事故として記憶に新しい。
これは明らかに、正としての非日常から負としての非日常へ、意図的に仕組まれた結果の事件である。
茶番だったのが、社長以下職員の嘘つき記者会見である。
彼らには、全く哲学が無い。
人間の日常や非日常はおろか、自分自身の存在についても考えられない全くの愚か者である。
だから、あのような嘘つき記者会見などを平気な顔してできるのである。
「エキスポランドは人間を幸せにする遊園地ではありませんでした。
人間を不幸のどん底に突き落とす、実は世にも恐ろしい場所でした。
だからわざと点検をしなかったのです」 彼らはこういうべきであった。
なぜなら実際その通りだから。安全は人が作るものである。
彼らにはその哲学が全く欠けていたのである。
哲学が欠けている人間にはもはや存在価値など皆無に等しい。
その存在価値の無いところに嘘つき野郎の茶番な芝居は成り立っているのである。
甲山羊二
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