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コラム
心に吹く隙間風
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心に吹く隙間風その8

 食は生命の基である。
また食は私たちの心も豊かにする。
しかし、いくら生命の基であるからといって、ありとあらゆるものを私たちの食生活に取り入れることはできない。
私たちの食生活は、安全であるということを前提に、そのものを安心して食せるということで成り立っているのである。
例えば、豚まんは美味しい。
それは豚まんが安全なる食品であるからこそ、美味しいであろうというイメージが増大するのである。
しかし、その豚まんにダンボールが混入されているとしたら、それは安全な食品ではなくなり、と同時に安心して食することができなくなる。
安全でもなく安心もできないとなれば、美味しいというイメージとは逆に、豚まんを見ただけでダンボールを彷彿し、豚まんに対する懐疑的な印象が固定化されてしまう恐れもある。
コロッケも然りである。
牛肉コロッケとの記載があるから、私たちはそれを信じ、イメージを増大させ、美味しく頂くのである。
それが嘘の記載で、豚肉や鶏肉やパンや饅頭の皮までが混入されていると聞いただけで、豚まん同様、牛肉コロッケにまで懐疑的な印象を持つに至るのである。
現在存続の危機にあるミートホープ社は、嘘の記載で、牛肉に豚肉や鶏肉やパンや饅頭の皮を混入させた、虚偽食品の先端を走っていた会社である。
私はそのコロッケを「超サプライズ!ミックスコロッケ」とし、略して「超サプコロッケ」と呼んでいる。
この「超サプコロッケ」だが、聞くところによると、味はなかなかのものであったらしい。
つまりこの「超サプコロッケ」、安全と安心を超越したスーパーレシピによって開発されたコロッケなのである。
その意味で、私はミートホープ社の田中社長をある種の天才だと評価している。
この際、『ミックス社長のおどろきキッチン』とか何とかいって、TVの料理番組に出演されてはいかがだろうか。
あるいは『皆で食べればなお美味しい』というタイトルで出版されてはいかがだろうか。ベストセラー間違いない。
私が腹立たしいのは、食品を扱うものの品性の甚だしい低さである。
例えば、宗教によっては、牛や豚を食さない戒律のものさえある。
人間の品性の良し悪しは他人への配慮の程度に比例する。
売れればそれでよい、買う消費者も悪いなどというコメントはもっての他、全くもって洒落にもならない。
田中社長の研ぎ澄まされた営利感覚と品性の低さと清潔さに欠けたあの面構えを思い出すたびに、今でも反吐が出そうな思いでいる。

甲山羊二
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