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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次

 ああ言えばこう言え!その11

 人間には、それぞれ宿命たる業があるように、それぞれ宿命たる癖もきちんと備えられている。
ただし、癖ゆえに自分の力ではどうすることもできない。
癖が自然消滅するまで、仲良くお付き合いする以外にない。
また癖は多種多様である。例えば、収集は立派な癖の一つである。
もちろん収集も多種多様である。なぜそれを収集するのか、本人には解らない。
解らないので、聞かれても説明が出来ない。その場を巧く取り繕い、誤魔化して、後は逃亡するしかない。
かつては私も切手や古銭を熱心に収集していたことがある。それもいつの間にか収まってしまった。
とりあえず、収集という癖と巧く付き合った結果であろう。
とにかくありとあらゆる物が収集の対象となり得るのだから、なかなか興味深い。
キーホルダーやペナントなどの記念品、怪しげな標本、かなりのマニアックなものまで、世の中で収集の対象とならないものはないのではないかと思えるほどである。
その意味では、お金も十分に収集の対象となり得る。
一般的には、お金の場合は収集と言わずに、貯蓄という。
しかし、過度な貯蓄は逆に身を滅ぼす危険がある。
実際に、私の知人の何人かは、過度な貯蓄という魔物に完全にとりつかれてしまい、挙句の果てには、自己破産や任意整理というゴールに行き着いてしまった。
また、収集が犯罪に結び付くこともある。
私の学生時代の2年先輩は、究極の女性下着収集家であった。
掘り出し物を他人から譲り受けたり、通販により入手したりしている間はよかったが、とうとうそれだけでは飽き足らなくなってしまったのだろう、最後は女子大の寮にまで侵入、御用となってしまった。
その後その先輩は、女性下着収集家から女児写真収集家へと華麗なる転身を遂げ、現在ではちょっとエッチな小学校教師として活躍中である。
まさに、収集という癖には、様々な人間ドラマが隠されているのである。
甲山羊二
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