牧場小屋
Top
エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次  

 ああ言えばこう言え!その2

 不思議な立て看板があるものである。
『<ダメ>犬は近寄るな!』これは一体どういう意味なのか、立て看板のその文句を見た瞬間
私は自分の脳味噌がまるでソフトクリームのように、取り急ぎ素早くしかも丁寧に渦巻こうとしていることを実感してしまった。
つまりはこうである。
「ダメな犬はお馬鹿さんに等しい。従ってそのようなお馬鹿さん犬は、ここには近寄ってはいけない」
「犬がお馬鹿さんかどうかに関わらず、とにかく犬という犬はここには近寄ってはいけない」
いずれかのメッセージであることは間違いないだろう。
いずれにせよ重要なことは、これらメッセージが確かに犬に向けられているということである。
そうなると、ダメな犬はお馬鹿さんであり、お馬鹿さんは立て看板はもちろんその文句やメッセージの意図を認識することは不可能であろう。
ではダメでない犬はいかがだろう。
血統書付きで血筋も良く、さらによく訓練されたゴールデンリトリバーやシベリアンハスキーあたりが、立て看板を見てニ三度頷きその後残念そうに首を振りながらその場を立ち去る姿もなかなか想像しがたいものがある。
ということは、立て看板のその文句に込められたメッセージとは一体如何なるものなのであろうか。
要するに何かが足らないのである。
『飼い主へ!ダメ犬であろうとなかろうと犬を近寄らせるな!』
これならどうであろう。
なかなか立派な文句でしかも分かりやすい。
甲山羊二
←1章を読む 3章を読む→